インナーマザー

「インナーマザー」について考えてみます。インナーマザーに悩む人は、1960年~1970年代生まれに多いそうです。

スポンサーリンク

インナーマザーってなあに?

インナーマザーは、大人になっても心の中を支配する「母親の残像」のこと。インナーペアレントとも呼ばれています。

子どもにとって世界の中心は母親です。お母さんが言ったことが法律であり、お母さんが言ったことは何でも正しい。子どもにとって母親の影響は絶大です。

しかし、ある一定の年齢になると、別の視点で母親を見るようになります。友達のお母さんや近所の人と比べて、「あれ?うちの母親はなんか違うんじゃないだろうか」と思うようになります。

たとえば、「あなたのためよ」と言いながら、「自分の希望通りに育って欲しい」と願う母親の願いが強くなればなるほど娘を抑圧的に育ててしまい、やがて娘は母親の愛情を支配だと感じるようになり、母親に言われた言葉や行動を心の中に強く刻み込んでいくようになります。

大人になり母親と別々に暮らすようになっても、日常生活の折々で母親を思い出し、かつて母親に言われた通りに行動してしまうのです。自分では望んでいないのに。

ちょっと前に、「母と娘の関係は複雑だよね。言葉にしては言わないけど、私の心の中にはいろんなドロドロした思いがあります」というような事を書いたとき、共感の声をメールや掲示板でいただきました。インナーマザーを抱えている人はけっこう多いのかも。

スポンサーリンク

NHK『インナーマザー』の特集

NHKの福祉ネットワークが、『インナーマザー』の特集をしていました。40代女性をターゲットにした「キラキラ40」の企画。「インナーマザー」に悩む人は40代前後の女性に多いということで。

なぜ40代女性に多くなるのか、番組の解説では、40代女性の母親世代の多くは、高度成長期時代に専業主婦となり、「子育て=自己実現」という考え方が広まる中で、子育てしたからだと分析していました。でも、私は、それプラス、兄弟姉妹の数が減ったこと、核家族化したこと、父親が弱くなったことも要因じゃないのかと考えています。

南場智子さん

南場智子さんは父親の影響をすごく受けているそうです。たぶん彼女は、「インナーマザー」ならぬ「インナーファザー」を抱えているんじゃないでしょうか。

しかし、南場智子さんの場合、理解してくれる母親がいました。父親から否定されるだけでなく、母親から肯定される経験があったから自分らしさを確立できたんだと思います。だから「インナーマザー」でも、お父さんや祖父母が味方になってくれていたら、そんなに悪化しないような気がします。

インナーマザーを抱える女性に密着

福祉ネットワークの特集に戻ります。ふたりの女性を密着してました。

1人目女性。彼女は、子どもの頃、母親のお手製の洋服ばかり着させられていました。「嫌だ」と反抗すると「嫌だと思うあなたはおかしい」と酷く怒られたそうです。習い事三昧の日々、大学や将来の仕事まで決めようとする母親。そんな母親から離れたくて大学卒業後すぐ結婚します。

途中を省きますが、結婚して子どもを産み、彼女の娘が中学生になったとき、彼女の娘は摂食障害になります。教育熱心だった彼女は、「母が誇りに思うような子育てをしたい」「完璧な子育てをしていると母親に誉めてもらいたい」と娘の中学受験に力を入れるのですが、そのことが原因で娘さんの心は壊れてしまいます。

希望の中学に合格することが出来ましたが、ある日、娘の部屋を掃除しているとき、彼女は引き出しの中いっぱいの娘の汚物を見つけます。娘さんは食べた物を吐いていました。部屋でこっそり吐くくらいだから、母親に見つかるのが恐かったのか知られたくなかったのでしょう。彼女は娘が苦しんでいたことを初めて知ります。

そこで反省できたらよかったんだけど、彼女は「インナーマザー」に支配されているので、母親にばれることをまたしても恐れます。娘のことが母に知られたら母から叱られる、と痩せていく娘に大きめの服を着させ、母親にばれないよう取り繕っていました。しかし、そうすることでどんどん壊れていく娘。自殺未遂を繰り返するようになり、娘はぼろぼろになっていきます。

彼女は、やどかり(摂食障害の子を持つ親の会)という「自助グループ」に参加します。最初は、娘さんの摂食障害を直すことが目的でしたが、そこで知り合った母親達と話していると、自分と同じような幼少期を過ごした人が多いことに気づきます。自分は一生懸命子育てをしてきたのになんでこういう風になるのか、自分の人生を全面否定されたような気持ちで苦しかったけれども、母親から受けた影響が娘との関係に影を落としていたことに気づかされます。

彼女は思いきって娘のことを母親に相談することにしました。「娘ひとりをまともに育てられないなんて」と怒られることを覚悟で、6年間ずっと隠してきた娘の病気をうち明けます。しかし、母親の反応は全く逆でした。「大変だったね。お前がかわいそうだ。もっと早く話してくれればよかったのに」と慰めてくれたそうです。

彼女は、今までの自分と決別するため、続けて母親に告白します。「でも、こんな風になったもともとの原因は、お母さんが私にしてきたことが原因なの」と。彼女の母親は怒り出します。「感謝されこそすれ、そんなふうに言われる筋合いはない」と。

母親は認めなかったけど、彼女は母親に言えたことですっきりしたそうです。そして、この日を境に娘さんの摂食障害も回復に向かいました。解説によると、彼女のように、実際に母親と向かい合い、自分のつらさを伝えることは、インナーマザーとの決別にすごく効果があるそうです。ただ、伝えるには注意も必要で、「なるべく冷静に伝えること」と「相手の意識を変えようとせず、告白したことでよしとすること」がポイント。

ケンカするほど仲が良いという言葉があるけど、母と娘も同じで、ほどほどのケンカは必要なんだろうな。言いたいことが言えなくて心の中にためこむから、母親が重くなるんだと思う。でも、私は言えないなぁ。そばにいたら別かもしれないけど、遠く離れている母に、この先何年生きられるかわからない母に、今さら伝えて何になるんだろうと理由が見つからない。母を傷つけずに言える自信もないし、母は泣き虫だし。でも、それは私が思っているほど傷ついてないからなんだろうか。

スポンサーリンク

2人目のインナマザーを抱える女性

2人目の女性は43歳。二人の娘の母親。

彼女は、母親から全く誉められずに育ちました。母親に誉められたくて一生懸命頑張るんだけど、母親が発する言葉はいつも非難ばかり。長くなってきたのでまた省略しますが、彼女は自分の娘達にやきもち妬いてしまうのです。

「私は大切に育てられなかったのに、なぜあなたはそんな顔をして笑うの」と。連鎖は必ずしも起きるわけではないけれど、連鎖は珍しいことでもないそうです。

彼女は話しながらぼろぼろ泣いてました。取材していた人が言ってたのですが、彼女のように昔を思い出すと泣きだす40代女性が多かったそうです。

母親とうまくいかない時

解決法は、

    • 気持ちを伝える。
    • 父親を味方にする
    • ほどよい距離感をとる。
    • 専門家に相談する。
    • 自助グループに入る。

などの対策をとるといいそうです。そして、母親に自分の気持ちを伝えられない人は、「生育歴(母親との日々)」を書いて、心に整理をつけるといいらしいです。

ただ、一人でこの作業をすると逆に悪化する可能性があるらしいので、「誰かのために」書くようにするといいみたい。とくに効果があるのは「夫」なんだそうです。